あえてラミネートしないという選択

あえてラミネートしないという選択

紙の質感を活かす印刷術

ポスターやパネル、シール印刷の仕上がりに大きく影響する「ラミネート加工」。水や汚れを防ぐための定番オプションとして、多くの方に馴染みのある加工方法ですが、実は「ラミネートをしない」ことが最良の選択となる場合もあるのをご存じでしょうか?


ポスターチャンネルでは、あえてラミネートを付けないことで、印刷用紙そのものの質感や発色を最大限に活かすご提案を行っています。本記事では、ラミネートの基本的な役割から、素材ごとの相性、そして「ラミネートしない方が良い」ケースについて、詳しくご紹介します。

ラミネートとは何か? まずは基本から

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[ラミネートの解説]


「ラミネート加工」とは、印刷物の表面に透明なフィルムを貼る仕上げ加工の一種です。汚れ、擦れなどから印刷面を守る役割を持ち、耐久性や高級感をプラスする手段として広く使われています。
印刷面のみの加工なので、裏面は紙がのままとなります。そのため耐水性は弱めです。


[代表的なラミネートには次の2種類があります]


・グロス(光沢)ラミネート:表面に強い光沢が出るタイプ。色鮮やかで派手な印象になる。
・マット(つや消し)ラミネート:反射を抑えた落ち着いた質感。高級感や上品さを演出する。


どちらも「保護+印象変化」が目的ですが、用紙によってはラミネートを施すことで、本来の質感や色味が損なわれてしまうこともあるのです。また、ラミネートとは別に「パウチ」加工もあります。

ラミネートのメリットとデメリット

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[メリット]


・汚れに強くなる
・擦れや指紋がつきにくくなる(耐久性向上)
・高級感と仕上げ感がアップ
・UVによる色あせ(劣化)防止に効果(耐候性向上)
・長期使用に強くなる(耐候性向上)
・湿気や温度変化による紙の変形を抑えられる
・衛生的に扱いやすく、拭き取り清掃が可能になる


[デメリット]


・紙の「本来の質感」が消える
・色味やツヤが変化し、狙った仕上がりと異なる場合がある
・再資源化しにくく、環境配慮面でマイナスになることも
・印刷面のみの加工のため、反りやすくなることがある


つまり、「ラミネート=必須」ではなく、紙の質感や使用用途に応じた選択が重要なのです。

光沢紙・半光沢紙にラミネートが向かない理由

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ポスターチャンネルで取り扱っている主な用紙


・マット紙
・光沢紙
・半光沢紙
・合成紙(合成樹脂)
・ホログラム紙(コート紙+フィルム)


この中で、光沢紙・半光沢紙は、すでに表面にコーティングが施されている用紙です。光沢紙は強いツヤ感、半光沢紙は控えめなツヤを持ち、いずれもラミネートを追加しなくても十分な視覚的インパクトがあります。


にもかかわらず、以下のような組み合わせを選ぶと本来の質感が失われてしまいます。
・光沢紙にマットラミネート → 光沢が打ち消され、質感が台無しに
・半光沢紙にグロスorマットラミネート → 半光沢紙の意味がなくなります


実際の事例として


あるお客様が「光沢紙にグロスラミネート」をご希望されましたが、仕上がりは「ツヤが強すぎて反射が気になる」との声があり、次回からは「ラミネートなし」のご注文に変更されました。印刷物は照明の下に置かれることも多く、反射しすぎると視認性が下がります。特に文章があり、読ませるようなポスターの場合注意が必要となります。半光沢紙や、マット紙にマットラミネート加工あたりがオススメです。


用紙×ラミネートの相性早見表

以下は、ポスターチャンネルでよく使われる用紙と、ラミネートの相性をまとめた表です。


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ラミネートとはべつに「パウチ」もありますが、仕上がりの印象は「グロスラミネート」に近似しています。ただし、四辺に3〜5mm程度のフチが付き、UVの耐性がなくなります。

ホログラム紙にはラミネートが必要な理由

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ポスターチャンネルのホログラム印刷は独自の印刷と加工を行っています。ここでは詳細の解説はできませんが、ラミネートが必須である事を解説します。


ポスターチャンネルで人気の「ホログラム印刷」は、5種類のホログラム用紙と幾度となる印刷検証によって判明した最適な印刷方法と、この用紙における、ラミネート(グロス)加工の必要性を重視して現在のホログラム印刷となりました。

その理由として下記があります


・印刷して硬化したインクと表面のホログラム層が傷つきやすく、保護のために透明フィルムが必要
・長期使用の目的と印刷面の摩耗対策のため
・「光の反射角度」による効果を維持するためにも、クリアな仕上げが必要
・「グロスラミネート」で印刷色とホログラムの色合いをさらに美しくするため


ここでは「紙の質感」よりも、「ホログラムの美しさを守る」ことが最優先です。


結論 ─ラミネートしない選択も立派な仕上げ

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印刷業界では、しばしば「ラミネート=高級仕上げ」といったイメージが先行しがちですが、実際は用途や紙質に合わせて「ラミネートをあえてしない」という選択が正解になる場面も多いのです。


ポスターチャンネルでは、ご注文時に「ラミネートあり・なし」を選択できますが、光沢紙・半光沢紙をお選びの場合は、ラミネートなしの仕上げでその紙本来の美しさをお楽しみいただくことを推奨しています。

補足:こんな場合はラミネートなしをおすすめします


・店内掲示や短期使用のポスター
・ライトが直接当たる場所(反射防止)
・写真作品やイラスト作品の色味を忠実に見せたい場合
・ポスター用フレームに入れて、キズなどの心配が不要の場合
・紙の質感をそのまま活かしたい高感度な用途(カフェや展示空間)


逆に、屋外での長期掲示や頻繁に手に触れる場面では、ラミネート加工が活きてきます。適材適所が大切ですね。

最後に

ラミネートは便利で安心な加工ですが、「何も足さない」という選択もまた、印刷の本質を活かす重要な判断です。紙が持つ風合いや光沢は、それ自体が完成された表現です。


ポスターチャンネルでは、用紙の特性や目的に応じて最適な仕上がりをご提案しています。「ラミネートすべきか迷っている」「質感を大事にしたい」といったご相談も、お気軽にどうぞ。


紙の個性を最大限に活かす印刷、一緒に考えてみませんか?